眼の後遺障害の慰謝料入門
千葉で交通事故の無料相談ができる弁護士をお探しの方へ。このページでは、弁護士が「眼の後遺障害の慰謝料」について解説しています。
交通事故で失明してしまったり、視力の低下や視野が制限されてしまったりと眼に後遺障害を残してしまうことがあります。視覚から得る情報は非常に多いので目に後遺症が残ると、日常生活が立ち行かなくなり辛いですよね。
その上、眼の障害が原因となって、より事故に巻き込まれやすくなってしまいますよね。このページでは、眼の後遺障害について、後遺障害等級との関係でまとめてみました。
後遺障害認定がされる眼の障害
眼球は、頭がい骨の目の部分にあるくぼみにすっぽり入って、外からは、まぶたを閉じることにより異物や衝撃から守られているため、ちょっとしたことで損傷することはあまりないです。
しかし、交通事故によって顔面を強く打ち付け眼の周辺の骨折をすると、眼球や視神経を損傷することがあります。この場合、眼に後遺症が残ってしまいます。
眼の構造(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
以下では、眼の後遺障害として等級認定される主なものをご紹介します。
視力障害
交通事故の外傷による眼の後遺障害のうち、目が失明、又は視力が低下するものを視力障害といい、後遺障害の認定がされることがあります。これは、眼球に対する外傷や視神経の損傷に起因します。
この場合、認定される等級は、両眼か1眼か、失明したか、視力低下の程度によって細かく分けられています。
具体的な等級は、少なくとも片目の視力が0.6以下に低下又は失明した場合に、その程度に応じて1級~10級、13級で認定されることになります。
なお、ここで注意が必要なのは、視力検査の際は、裸眼視力ではなく、矯正視力をもって行われます。そのため、裸眼での測定よりも、視力が格段に低いことになります。
例えば、両眼を失明した場合1級、1眼が失明又は視力が0.02以下になった場合8級、1眼の視力が0.6以下になった場合13級という形で認定されます。
(まとめ表) 視力障害の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
1~10級、13級 | 少なくとも1眼の視力が0.6以下に低下、又は失明 |
調節機能障害
交通事故により眼の調整機能が損なわれてしまった場合、眼の調整機能障害として後遺障害の認定がされることがあります。
この場合の認定基準は、「著しい調整機能障害を残すもの」に限定されており、それが両眼か1眼かにより異なる等級が認定されます。「著しい調整機能障害を残すもの」とは、
調整力が通常の場合の2分の1に減じているものをいいます。
この通常の調整力とは、調整力の障害が生じているのが片眼の場合には、他の健眼の調整力をいいます。両眼の調整力障害のケースでは、年齢別に定められた調整値を基準とします。
ただし、障害の発生していない健眼の調整力が既に一定基準以下である、又は両眼に障害が発生している場合に55歳以上であるケースでは、既に実質的な調整機能は失われていると認定され、後遺障害の対象となりません。
具体的な等級ごとの認定基準は下の表を参考にしてください。
(まとめ表) 調整機能障害の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調整機能障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい調整機能障害を残すもの |
運動機能障害
交通事故により眼球が麻痺して、その動きが制限されてしまうという後遺症を負ってしまうことがあります。この場合、眼の運動機能障害として後遺障害の認定がされることがあります。
この場合は、眼球の注視野の広さが制限された程度や複視の有無・態様によって、異なる認定がされることになります。
尚、「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは、眼球の注視野の広さが2分の1以下に減じたものをいい、「注視野」とは、頭部を固定し、
眼球を運動させて直視できる範囲のことをいいます。
また、「複視」とは、右眼と左眼網膜の対応点に外界の像が結像せずにずれているために、物が二重に見える状態のことをいいます。
認定されうる具体的な等級については、以下の表を参考にしてください。
(まとめ表) 運動機能障害の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
11級1号 | 両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
視野障害
交通事故により、視野に関して後遺症が発生してしまうことがあります。この場合、眼に関する視野障害として後遺障害の認定がされることがあります。
この場合の等級認定は、半盲症、視野狭窄、視野変状により、視野(一点を見つめて同時に見える外界の広さ)が通常と比べて60%以下になったのが、
両眼か1眼かによって異なります。
「半盲症」とは、両眼の視野の右半分又は左半分が欠損するものをいいます。
「視野狭窄」とは、視野の全体が狭くなること、又は視野の一部分が不規則的な形で狭くなるものをいいます。
ここでいう「視野変状」とは、半盲症、視野狭窄を除く、暗点と視野欠損をいいます。暗点とは、視野の中に見えない又は見えにくい部分がある症状をいいます。
認定されうる具体的な等級については、以下の表を参考にしてください。
(まとめ表) 視野障害の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
9級3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
13級2号 | 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
まぶたの障害
交通事故により眼の外側にあるまぶたに後遺症を残すことがあります。この場合、まぶたの欠損障害、運動障害として後遺障害の認定がされることがあります。
まぶたの障害においては、系列を異にする2以上の障害が存する場合は、併合してより高い等級認定がされることになります。
欠損障害
まぶたの欠損障害は、欠損したまぶたが両方か片方か、又欠損の程度によって異なる等級の認定がなされます。認定基準については以下の表を参考にしてください。
尚、「著しい欠損を残すもの」とは、まぶたを閉じた際に、角膜を完全に覆い得ない程度のものをいいます。
「一部に欠損を残すもの」とは、まぶたを閉じた際に、角膜を完全に覆うことができるものの、球結膜(しろめ)が露出している程度のものをいいます。
「まつげはげを残すもの」とは、まつげの生えている目の縁の2分の1以上にわたってまつげのはげを残すものをいいます。
(まとめ表) まぶたの欠損障害の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
9級4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
13級4号 | 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
運動障害
まぶたの運動障害は、著しい運動障害を残すのが、両眼のまぶたか1眼のまぶたかにより異なる認定がされることになります。
「著しい運動障害」とは、まぶたを開けた際に瞳孔領を完全に覆うもの、又はまぶたを閉じた際に角膜を完全に覆いえないものをいいます。
認定されうる具体的な等級については、以下の表を参考にしてください。
(まとめ表) まぶたの運動障害の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
11級2号 | 両眼 のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
12級2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
その他の障害
交通事故によって眼に関してその他の後遺症を残すことがあります。後遺障害の認定がされるものとして、外傷性散瞳、流涙があります。
外傷性散瞳
眼は、瞳孔により取りこむ光を調整しています。この瞳孔が開きっぱなしになると、特に明るいところで物を見るのが困難になります。この原因としては、虹彩の断裂などがあります。
「散瞳」とは、瞳孔の直径が開大して光に対する反応が消失又は減弱するものをいい、「羞明」とは、俗にいうまぶしいことです。
認定される可能性がある等級は、以下の通りです。
(まとめ表) 外傷性散瞳の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
11級相当 | 両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
12級相当 | 1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
12級相当 | 両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
14級相当 | 1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
尚、外傷性散瞳と視力障害又は調整機能障害が併存する場合は、併合して後遺障害の認定がされることになります。
流涙
交通事故により、眼から涙が流れ続ける後遺症を負ってしまうことがあります。この場合、認定基準を満たすと流涙として後遺障害の認定がされます。
流涙の原因としては、外傷による涙路の断裂、狭窄、閉塞等があります。この場合の認定基準を以下の表にまとめましたのでご参照ください。
(まとめ表) 流涙の等級認定基準
等級 | 認定基準 |
---|---|
12級 | 両眼に常時流涙を残すもの |
14級 | 1眼に常時流涙を残すもの |
眼の後遺障害の慰謝料相場
後遺障害による慰謝料の相場
交通事故の外傷により後遺障害を負い、等級認定を受けた場合、後遺障害に対する慰謝料額はその等級ごとにだいたい決まってきます。この等級は、最も重度の1級から軽度の14級まで存在します。
眼の後遺障害として等級認定された場合、裁判で認められる相場を以下にまとめてみました。等級が1級違うだけでも、その慰謝料額の相場に大きな開きがあることがお分かり頂けると思います。
交通事故の後遺障害では、適切な後遺障害の認定を受けることが重要となるのです。
(まとめ表) 後遺障害の慰謝料相場
障害の分類 | 等級 | 裁判における相場水準 |
---|---|---|
視力障害 | 1級~10級 | 550万円 ~2800万円 |
13級 | 180万円 | |
調整機能障害 | 11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 | |
運動機能障害 | 10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 | |
12級 | 290万円 | |
13級 | 180万円 | |
視野障害 | 9級 | 690万円 |
13級 | 180万円 |
裁判例から見る慰謝料の傾向
交通事故による眼の後遺障害のうち、視力障害に絞って判例の慰謝料の傾向についてまとめてみました。
判例年月日 | 後遺障害の内容 | 後遺障害の等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|---|
東京地判 平成4.1.21 | 右眼失明 | 8級 | 1000万円 |
横浜地判 平成18.10.26 | 左眼失明 | 8級 | 830万円 |
名古屋地判 平成19.4.25 |
視力障害
その他 |
併合13級(視力障害としても13級) | 220万円 |
このように、裁判になった場合に認められる後遺障害慰謝料の金額は、上記の裁判での相場水準に沿ったものになっていることがお分かりになると思います。
しかし、同じ等級の障害が認定された場合であっても、以下のような要因によって、具体的なケースで認められる慰謝料の金額は異なることが多いです。具体的には、例えば
・症状の程度
・労働能力への影響
・年齢や被害者の健康状態
・事故以外に後遺障害の原因になった事情の有無やその程度
・その他の後遺障害併発の有無
のような様々な要因によって慰謝料額は変わってきます。
以上から、たとえ同じ等級の後遺障害であっても、裁判でどのような事情をどのように主張・立証するかによって、慰謝料額が増額する余地があるといえます。
弁護士相談のメリット
交通事故で眼に後遺障害を負ってしまうと、日常生活を以前と同様に送ることが不可能、又は困難になったり、場合によっては周りの視線が気になったりしてその苦痛は計り知れません。
交通事故での後遺障害について、弁護士に依頼するメリットは、何といってもその慰謝料を増額できる可能性が高いということです。
ただし、全ての弁護士が交通事故に強いとは限りません。交通事故の分野は、法律の知識のみでなく、事故を扱った経験、眼の後遺障害に関する医学的な基礎知識、保険に関する知識のような様々な分野の専門知識を必要とします。
保険会社との交渉や裁判での適切な主張・立証を行い、適切な慰謝料額に増額するためには、交通事故に関する専門知識やその取扱い経験がものをいいます。 交通事故に強い弁護士は、電話や面談、LINE等での無料相談を受け付けています。相手方との交渉の負担を軽減し、慰謝料額を増額するために、まずはご相談されることをお勧めします。