耳の後遺障害の慰謝料入門
千葉で交通事故の無料相談ができる弁護士をお探しの方へ。このページでは、弁護士が「耳の後遺障害の慰謝料」について解説しています。
また、聴力を失ってしまった場合には、周辺の危険に気付くことができず、更に事故に巻き込まれる危険もあります。このページでは、そのような後遺障害でお悩みの方に向けて、耳の後遺障害の種類や対応方法について簡単に紹介します。
後遺障害認定がされる耳の障害
耳の構造(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
聴力障害
耳の障害で最初に思いつくものは、聴力障害ではないでしょうか。
交通事故においては、耳の周辺器官に直接的な衝撃が加わる場合や、聴力に関連する脳の部位に衝撃が加わる場合などにより、聴力に障害が出てしまうことがあります。
聴力障害は、交通事故の後遺障害として認められており、その内容により4級から14級までの異なる後遺障害等級認定がなされます。
具体的な後遺障害等級の認定基準は、以下の通りです。
この表のように、聴力障害は、どのくらい小さな音を聞きとれるかという純音聴力(※)と、どの程度はっきり聞こえるかという語音聴力(明瞭度)のバランスで決定されます。
(※)例えば、両耳聴力90dB以上とは、90dBよりも小さい音は聞き取れないということです。
耳介の欠損障害
交通事故の衝撃により、耳の部分(外に出ている部分)が欠けてしまうことがあります。これを、耳介の欠損障害といいます。
耳介の欠損障害で認定される後遺障害等級には「1耳の耳殻の大部分を欠損したもの」として12級がありますが、「外貌の醜状障害」ととらえられる場合は7級に認定されることもあります。
また、「耳殻の大部分の欠損」とは耳介の軟骨部が2分の1以上欠損したものをいいますが、2分の1に達していなくても「外貌の単なる醜状」として12級に認定される場合もあります。
(耳介の欠損障害)
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級4号 | 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの |
耳漏
耳漏とは、鼓膜部分に溜まった膿が、外に流れだしてくる症状をいいます。交通事故により、鼓膜に穴があいてしまった場合に生じる後遺障害です。
耳漏は、その頻度や程度により、12級もしくは14級に該当します。
(耳漏)
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級相当 | 鼓膜の外傷性穿孔による耳漏が常時あるもの |
14級相当 | 鼓膜の外傷性穿孔による耳漏があるもの |
14級相当 | 外傷による外耳道の高度の狭窄で耳漏を伴わないもの |
耳鳴
交通事故の衝撃が耳の周辺器官や脳に加わることにより、耳鳴の後遺障害が残ることがあります。
耳鳴りの後遺障害は、その性質により、12級のしくは14級に該当します。
12級は、耳鳴りの高さを調べる「ピッチ・マッチ検査」と耳鳴りの音量を調べる「ラウドネス・バランス検査」によって医学的に証明できる場合に認定されます。
14級は、「常時耳鳴があることを合理的に説明できる」場合に認定されますが、このときの「常時」は、自覚症状が昼間はないが夜には現れる場合も「常時」として扱われます。
(耳鳴)
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級相当 | 耳鳴に係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの |
14級相当 | 難聴に伴い常時耳鳴があることが合理的に説明できるもの |
耳の後遺障害の慰謝料相場
後遺障害等級に基づく慰謝料の相場
交通事故での後遺障害による慰謝料については、実務上、一定の相場があります。
それは、「赤い本」と呼ばれる法律雑誌に記載されている基準で、多くの裁判例もこの基準に沿う形で出ています。
この「赤い本」によると、耳の後遺障害の慰謝料の相場は、以下の通りです。
(聴力障害)
等級 | 後遺障害慰謝料の相場 |
---|---|
4級 | 1670万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
14級 | 110万円 |
(耳介の欠損障害)
等級 | 後遺障害慰謝料の相場 |
---|---|
12級 | 290万円 |
(耳漏)
等級 | 後遺障害慰謝料の相場 |
---|---|
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
(耳鳴)
等級 | 後遺障害慰謝料の相場 |
---|---|
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
裁判例からみる慰謝料の傾向
以下では、耳の後遺障害のうち、聴力障害に絞って、判例の慰謝料の傾向をまとめてみました。
判例年月日 | 後遺障害の内容 | 後遺障害の等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|---|
福井地判 平成25.12.27 |
聴力障害 その他 |
併合4級 (聴力障害としては9級) |
1800万円 |
東京地判 平成25.1.16 |
聴力障害 | 14級 | 110万円 |
岡山地判 平成21.5.28 |
聴力障害 | 11級 | 420万円 |
東京地判 平成19.11.5 |
聴力障害 | 9級 (片方の耳の聴力を全く失った) |
700万円 (日常生活への支障の観点から増額) |
松山地判 平成17.6.16 |
聴力障害 精神障害 |
併合8級 (聴力障害としては9級) |
850万円 |
神戸地判 平成8.11.28 |
聴力障害 | 10級 (事故前に11級相当の既往症) |
170万円 |
このように、裁判例も、基本的には「赤い本」の基準にのっとって判断していることが分かります。
ただし、聴力障害の他にも後遺障害が認められる場合や、日常生活への支障が特に大きいと判断された場合には、慰謝料は増額されています。
弁護士相談のメリット
交通事故を弁護士に相談するメリットは、なんといっても賠償額の増額が見込めることにあります。
交通事故は、その賠償額を争うにあたって、法的な知識に留まらず、事故を起こした車両の性質、後遺障害の内容、程度、保険に関する知識など、さまざまな専門的な知識を要します。
また、裁判で争うことになった場合、適切な時期に適切な主張をしなければ、裁判官に認めてもらうことはできません。
交通事故に詳しい弁護士であれば、相手方との交渉においても、裁判においても、その知識やノウハウを生かして、必要十分な活動を行うことができます。
聴力障害という重大な後遺障害を負ってしまった場合に、少しでも多くの賠償金を受け取りたいと考えることは自然なことです。是非一度弁護士を頼ってみてはいかがでしょうか。