交通事故の慰謝料を相続したとき
千葉で交通事故の無料相談ができる弁護士をお探しの方へ。このページでは、弁護士が「交通事故の慰謝料を相続したとき」について解説しています。
交通事故の慰謝料は誰が相続できるの?
被害者本人の慰謝料請求権は相続される
そもそも、相続とは、ある人が死んでしまったときに、親族などがその財産を引き継ぐことをいいます。
そして、慰謝料請求権も、死亡した人の財産の1つとして、相続の対象となります。
なお、慰謝料請求権に関しては、死亡した人の精神的苦痛に関するものであるから、財産とはいえず、相続の対象にならないのではないかという議論もあります。
もっとも、現在の日本の裁判は、慰謝料請求権も相続の対象となることを前提として動いていますので、この議論は現状気にする必要はないでしょう。
相続人の範囲とは?
相続人の範囲は、民法という法律により規定されています。
まず、死亡した人(被相続人といいます)に配偶者がいれば、その配偶者は必ず相続人になります。
更に、被相続人に子供がいれば、その子供も相続人となります。この場合の子供を、第1順位の法定相続人といいます。なお、子供が既に死亡していた場合などには、孫やひ孫に相続の権利が生じます。
被相続人に子供がいない場合、その親が相続人になります。この場合の親を、第2順位の法定相続人といいます。なお、両親が既に死亡していて祖父母が健在の場合、祖父母に相続の権利が生じます。
被相続人に子供がおらず、親や祖父母も死亡しているような場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。この場合の兄弟姉妹を、第3順位の法定相続人と呼びます。仮に兄弟姉妹が死亡していた場合などには、その子供が相続の権利を得ます。
このように、被相続人の家族形態により、相続人の範囲が異なります。
相続人の権利を失う場合とは?
相続人に当たる場合であっても、例外的に相続人の権利を失う場合があります。
相続放棄
相続放棄とは、文字通り自己の相続の権利を放棄することをいいます。
相続の放棄は、相続人が、被相続人の死亡を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申請することにより行うことができます。
相続の放棄をした場合には、確定的に相続人としての地位を失い、原則としてその撤回は許されません。
相続欠格
相続欠格とは、被相続人に対し一定の不誠実な行動をとった相続人の相続の権利を否定する規程をいいます。
その行為は、民法891条各号に規定されています。例えば、故意に被相続人を死亡させた場合や、詐欺または脅迫により相続に関する遺言をさせた場合などです。
推定相続人の廃除
推定相続人の廃除 とは、被相続人の生前に、相続人となり得る者(推定相続人)に著しい非行があった場合、被相続人の請求により、家庭裁判所が推定相続人の相続権の廃除を認定することをいいます。
排除された推定相続人は、被相続人が死亡した場合でも、相続人になることはできません。
(まとめ表)
慰謝料請求権の相続の可否 | 相続は可能 |
---|---|
相続人の範囲 | ①配偶者は必ず相続人になる ②子、両親、兄弟姉妹の順で相続人となる |
相続人の権利を失う場合とは | 相続放棄、相続欠格、推定相続人の廃除 |
被害者本人の慰謝料とは異なる、遺族固有の慰謝料とは
被害者遺族固有の慰謝料とは
交通事故の被害を受けて、近親者が死亡してしまった場合、その近親者も精神的苦痛を受けたものとして、近親者固有の慰謝料が認められることがあります。これを、遺族固有の慰謝料といいます。
遺族固有の慰謝料は、一度被害者本人に生じて相続される、被害者本人の慰謝料とは別のものですので、相続により得るものではありません。
遺族固有の慰謝料は、民法711条により認められます。
なお、711条は、被害者が死亡した場合についてのみ規定していますが、解釈上、被害者が死亡しなくとも、近親者が、被害者が死亡した場合と同じ程度の精神的苦痛を感じたと認められる場合には、親族固有の慰謝料請求権が認められるとされています。
固有の慰謝料を獲得する遺族の範囲とは
固有の慰謝料を獲得する遺族の範囲は限定されています。
そもそも、民法711条は、被害者死亡の場合に固有の慰謝料が生じる範囲を、被害者の父母・配偶者・子と限定しています。
しかし、判例上、被害者との間に父母・配偶者・子と実質的に同視できる身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者については、父母・配偶者・子にあたらない親族にも固有の慰謝料を認めています。
例えば、身体障害者であるため、長年にわたり被害者の庇護のもとで生活していた被害者の妹について、固有の慰謝料を認めた判例があります。
(まとめ表)
被害者遺族固有の慰謝料 | 近親者の死亡により生じた近親者の精神的苦痛に対する、近親者自身に生じる慰謝料 |
---|---|
固有の慰謝料を獲得する遺族の範囲 | 被害者の父母・配偶者・子、及び実質的にこれと同視しうる関係にある者であって、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者 |
相続人の加害者に対する対応
相続人が事件の対応を行うことになる
交通事故で被害者が死亡してしまった場合、その被害者の権利はほぼすべて相続人に相続されます。
交通事故で生じた加害者への賠償請求権も相続されることになるため、相続人には、その金額の交渉などを行う必要が生じます。
もっとも、相続人は葬儀などを行ったり、他の相続人と遺産の分割の協議を行ったりするため、加害者側との交渉を行う時間的・精神的余裕がないことも多いです。
そのような場合には、交通事故に詳しい弁護士に事件処理を一任し、任せることも良い選択でしょう。
相続人の間で示談の内容が折り合わない場合
相続人の間で示談の内容が折り合わない場合、若干の面倒が発生します。
そもそも、損害賠償請求権は、相続によって各相続人が分割して習得するため、その行使に相続人間の合意は必要ありません。
しかし、実際問題、裁判を行わずにその請求をするためには、相手方と交渉をしてその金額を決めなければなりません。これを行うのが示談です。
しかし、加害者側の保険会社は、相続人の間で示談の内容に合意がない場合、各相続人と個別に示談することを嫌がる傾向があります。
そのため、相続人間で示談の内容が折り合わない場合、各相続人が個別に加害者側に対して裁判を起こすケースが多いです。
(まとめ表)
相続人が事件の対応を行う必要が生じる |
相続人間で示談の内容が折り合わない場合、各相続人が個別に加害者側に対して裁判を起こす必要が生じる |